アディクトの回復支援とともに、世間とアディクトのなかにあるアディクション問題への偏見解消と、アディクトの就労・生活面での自立をめざし、各種支援活動を行う。

木津川ダルクにおけるアディクション問題を抱える人への回復支援。龍谷大学と連携してのアディクション問題研究及び、地域で開催されている薬物乱用防止、回復支援プログラムへの協力や講師の派遣、よりそいホットラインの電話相談事業。

今回チャレンジした事業の概要について教えてください。
培ってきた知見を活かし、新たなつながりと機会を創出。

チャレンジした事業は、大きく3つあります。1つは、デジタルプラットフォームの構築です。コロナ以前、アディクトの回復支援を目的とした会合や集会、セミナー、研修会は、さまざまな地域で実施されていました。
それがコロナ禍に入り、ほぼ中止に。リアルでつながることができなくなって初めて、インターネットを活用した支援の仕組みが整っていないことに気づいたのです。アディクトが回復の場につながる機会をさらに増やす意味でも、デジタルプラットフォームとパソコン操作を習得する環境は必須と考え、実施しました。2つ目は、就労・自立訓練を行う障害福祉サービス事業所「カルデモンメ」の設立です。木津川ダルクで行ってきた従来の生活支援に、新たに農業体験を加えたプログラムを提供しています。そして最後が、便利屋「楽々」事業。お試し就労体験によって自らの得手・不得手を把握し、一般就労に活かしてもらおう。こうした思いで考えた事業です。
2013年からの木津川ダルク運営を通して培った薬物依存者回復支援ノウハウを活用し、以上の3事業に
挑みました。

アディクトが置かれた状況を的確に把握し、解決策を打ち出す
コロナをきっかけに普及した在宅勤務は、飲酒を好む人とアルコールとの距離を近づけました。アル
コールや薬物、ギャンブルに特別給付金を使ってしまったという例も聞きます。このようにコロナは直
接・間接的に、依存症リスクの高い人々をアディクティブな行動に向かわせました。アディクション問題予備軍が増える一方で、アディクトを対象としたミーティングなどは減り、アディクトが孤立した時期もあったといいます。ほどなくして各支援機関がオンラインでのコミュニケーション方法を確立したため、コロナ前から支援機関とつながっていたアディクトについては、つながりと回復を維持することができました。
ただ、オンラインだけのつながりでは、共感や一体感の醸成が難しい部分もあり、オンラインでつながった後の受け皿もまた重要だと考えるに至ったのです。アディクトが置かれた状況を分析した結果、デジタルプラットフォーム構築事業と障害福祉サービス事業所「カルデモンメ」の設立、便利屋「楽々」事業に行きつきました。

予期せぬトラブルと不安のなかで、できることを一つずつ。
障害福祉サービス事業所「カルデモンメ」の機能を持たせる物件の取得に悩まされました。
もともと「カルデモンメ」は、一か月の家賃約30万円の賃貸物件で始める予定でした。2022年7
月から始まった実施期間の初期にあたる9月には物件を借りて、事業を動かしていく予定だったの
です。しかし、この賃貸物件を所有していた不動産会社側の都合で、物件を借りることができなく
なってしまいました。代わりの物件を探すか、賃貸契約ではなく直接購入に切り替えるかの判断を
迫られ、一時は事業がとん挫。『本当に事業をやり遂げられるだろうか。事業を諦めるなら、使ったお
金は返さなければならない』といった不安からお金を使うのが怖くなり、動きが鈍くなってしまっ
たこともありました。農業体験や便利屋事業の準備を進めようにも、それぞれの資材置き場を中心
に、「カルデモンメ」の物件ありきで考えていた部分もあって大きく動かすことが難しく、身動きが
取れなくなっていました。
最終的には物件の直接購入に切り替え、休眠預金活用事業の採択を武器に政策金融公庫と交渉。物
件購入用途で3,000万円ほどの融資を受けることができました。物件の鍵をもらったのは、11月
末のこと。それから気持ちも新たに、急ピッチで事業を進めました。

やらせる就労からやりたい就労へピンチを乗り越え、高い成果を達成。
「カルデモンメ」の月間開所日20日(週あたり5日)を成果目標に掲げていましたが、これを上回る週
6日ペースで稼働できています。利用登録者については、24名目標のところ現状は12名。木津川ダ
ルク利用者がスライドしてきた形ですので、新事業の認知を拡大していく必要性を感じています。相
談件数は月間30件、オンラインでは20件を目標にしていました。総数では、前者が15~20件、後
者が20件以上。ケース単位では5件です。デジタルプラットフォームの一つであるLINEには、気づ
くと50件以上の通知が来ていることも珍しくありません。各地のダルクや医療機関と「カルデモン
メ」の利用者をつなぐオンラインミーティングは、月20回目標のところ、現状は10回です。こうし
たデジタルプラットフォームにふれる手段として、8台のパソコンを入れたパソコンルームも活用
してもらえているようです。農作業体験の成果目標には、自作の野菜を使った食事会3回を掲げてい
ます。夏はプチトマトとキュウリのサラダ、デザートにスイカ。冬はお芋を使ったお鍋で、目標の3回
を達成しました。
便利屋事業は、2022年末に記念すべき第一回目のお仕事を受注。残置物撤去のお仕事でした。仕事
への意欲と、作業ができるかどうかのバランスを見つつ、希望者と相談を重ねてメンバーを選出し、
仕事を完了させました。

回復者が回復者を支援する未来をめざし、まずはやりがい支援に注力。
アディクション問題を抱える人が回復できる、という事実は、まだあまり知られていません。ダルクで回復して一般就労をめざす時、履歴書を用意するわけですが、そこに「ダルクの利用経験」や「薬物依存症」といったことを書くと、採用されない。だから、回復者本人でさえ、ダルクの存在を過去から排除してしまいがちです。これでは、回復できる場の存在をきちんと伝えていくことはできません。この現状は、回復者が仕事を持って働き、別のアディクトを支援していく未来をさらに遠くへ押しやってしまうでしょう。回復者本人に、自らの回復に対して誇りと自信を持ってほしい。実績を積み、その先の自立につなげてほしい。
木津川ダルク運営も、今回の事業も、こうした思いのもとで展開しています。思いを実現するため、まず取り組むのは、就労支援から一歩進んだ「やりがい支援」。便利屋の仕事のほかにも、条件に納得できる利用者がいれば、就労継続支援A型事業所・B型事業所への紹介も行っていきます。休眠預金活用事業にチャレンジしたことで、提案できる就労先の幅が広がりました。選択肢があれば、やりたいことや、向いている仕事も見つかりやすくなるでしょう。近い将来、ほかの支援機関でこのモデルを参考にしてもらえるよう、継続と実践を続けていきたいと考えています。

回復支援の会へのご寄付のお願い
一般社団法人回復支援の会「木津川ダルク」、「カルデモンメ」がますます地域社会に貢献できる施設へと発展するために、そして薬物問題を持つご本人、ご家族が穏やかで充実した人生が手にできますようにご支援をお願いする次第です。
何卒温かいご支援を心よりお願い申し上げます。
https://syncable.biz/associate/recosupo/donate

タイトルとURLをコピーしました